東京マラソンへの応募者が過去最多になるなど空前のマラソン人気を背景に、都心などでランニングビジネスが活気づいている。走り方講座やランナー向けの食事を提供するカフェなど取り組みも様々だ。こうした拠点は皇居周辺に集中していたが、ここ数年は駒沢公園や代々木公園などにも登場。ランナーの利用もさらに広がりそうだ。

「しっかりとひざを上げて」――。10月後半の平日の朝、駒沢公園(東京・世田谷)内に女性コーチの声が響いた。トラック・トーキョー(同)が週4回、朝と夜に同公園内などで開くランニング講座に、この日は5人が参加した。

 講座は今年4月にスタート。元スポーツクラブ勤務の小田卓矢社長は「健康のためにランニングを始めたいが、やり方が分からないという人が多数いる」とみる。初心者を取り込み、開講から半年強で会員数は約80人に上る。

 月4725円の会費を支払うと、何回でも参加できる仕組み。開業直後から週2回程度顔を出す主婦(35)は「骨盤や手足の正しい動かし方を教えてくれる。最初は全く走れなかったのに、先日は公園(1周約2キロ)を3周もできるようになった」と話す。

 主に代々木公園(東京・渋谷)を会場とするセカンドウィンドAC(東京・千代田)の練習会は「記録を伸ばしたい」という上級者向けで、会員数は約1300人。同社は9月、企業にコーチを派遣する事業を始めた。金額は30人参加なら1回10万円程度で、同社は「社員の健康づくりの一環でジョギングを取り入れる企業が増えている」と説明する。

 ランニング後、体力を回復するための食事を提供する飲食店も出てきた。駒沢公園に近いカフェ「ファンラン」(東京・世田谷)では、ハードな走り込みの後に補給した方が良いとされるたんぱく質や鉄分を含むメニューを1500円で用意する。越後忠一店長は「記録を伸ばすために、食事にまで気を配るこだわりの強いランナーが増えている」と指摘する。

 ランナーが荷物を預ける「ランナーズステーション」もサービスを充実させている。「ファンライドステーション プラス ランステ」(東京・港)は7月、終業後に自宅までランニングで帰宅するランナーの荷物預かりサービスを開始。仕事に使う荷物やスーツを預け、翌日に取りに来るまで保管する。料金は700円という。

 矢野経済研究所によると、2011年のランニングシューズの国内出荷市場規模は前年比約6%増の約501億円だった。ランナー向け雑誌「月刊ランナーズ」を発行するアールビーズ(東京・渋谷)は「ランニング講座数はここ数年で急増している。道具だけではなく、関連ビジネスが広がりをみせている」としている。

(日経新聞)