世界保健機構(WHO)が定める「ライフスキル」
①意思決定、②問題解決、③創造的思考、④批判的思考、⑤効果的コミュニケーション、⑥対人関係スキル、⑦自己認識、⑧共感性、⑨情動への対処、⑩ストレス・コントロールの10個を「日常的に起こる様々な問題や要求に対して、より建設的かつ効果的に対処するためのスキル=ライフスキル」として挙げ、これらの修得を目指すよう、各国の学校教育に向けて提言している。
まさにビジネスの現場で必要とされる能力そのもの。

『ライフスキル』をサッカーの観点で言えば、「こんな選手になりたい」という目標があり、そこに実際に向かうためには「どんな練習をすればいいだろうか」と自分で考えることが必要になる。
しかし、実際にそうしたことを考える選手は少ない。
これはサッカーに限らないが、なにかターゲットがあった時に、そこへどのように向かっていくのかという力が必要。

サッカーってミスが前提のスポーツ。
人間が一番器用に使えるのは手。その手が使えない。
サッカーはそれに加えて90分間試合が止まらない。
野球やテニス、バレーボールのように毎回決まったところにセットされるわけではないから常に試合は流動的。
ポジションも一応は決まっているけれど「あなたはこの範囲から動いてはいけない」ということはないので、より試合の状況は複雑。
また、監督のサインを見ながらプレーするスポーツではない。
不確実性が高く、常に複雑で流動的な中、ゴール、スペース、ボール、相手選手、味方選手といろいろな状況の変化を見て判断しプレーしなければならない。
これがサッカーというスポーツの特性。

そこに、指導者が自分の知識を押し込んでしまうと、子供たちが考えなくなる。
特に小学生の時は、自分でいろいろなアイデアを出して失敗やうまくいかない経験をたくさんして、じゃあ次はどうしたらいいかということを、また自分で考えて・・・・・・というサイクルがすごく必要になる。
その時に指導者が「ああしろ、こうしろ」「こうやっておけば間違いないんだ」とやってしまうと、子供たちは自分で考えることをやめてしまう。

小さい時から与えられて育ってきていると、待っていればそのうち答えを与えてくれるだろうという姿勢になる。
指示待ち人間になってしまう。

一つだけ大事なこと。
「サッカーという競技におけるターゲット、目的がなにか」
サッカーにおける最大のターゲット。
それはもちろんゴールにボールをぶち込むこと。
そして、守備の局面で言えば相手からボールを奪い、ゴールを守ることが大事になる。
この二つに関しては「攻撃の目的は何?」「それで本気でボールを取りに行ってるの?」などとしつこいくらいに投げかけて伝えている。
その上でじゃあどうやってゴールを取るのか、どうやって相手からボールを奪うのかというのは、まずは彼ら自身が考えること。

ボールを持っている側には「どんどんゴールを目指せ」。
守っている側には「ボールを取りに行け」。
伝えていることはサッカーの本質に関わるたったそれだけの部分なのに、これだけいろいろなことを彼ら自身が発見する。

勘のいい子もいれば、その「発見」をするまでに時間がかかる子もいるが、子供たちの間で話し合いが起きてくる。
子供なんで「こうした方がいいよ」なんて言わないが、「やれよ!」みたいに口は悪いけれども、そこにコミュニケーションが起きる。

サッカーそのものを教えることも大事だけれども、彼ら自身がなによりサッカーを楽しみながら自然と学べるような状況・環境を作ってあげることこそがより大切な大人の役割。

オフィスにおいても同じことが言える。
部下に対して「ああしろ、こうしろ」と言うのではなく、部下が自然とそうしたいと思うような状況を作ってあげる。それこそが上司の本来の役割ではないか。

「サッカーを教えない」というのは楽じゃない。
「ああしろ、こうしろ」と答えを示して、できない子がいたら「なんでできないんだ!」と怒鳴っている方がよっぽど簡単。
それは、適切に状況・環境を作るためにはずっと子供のことを観察していないといけないから。
子供の表情。話していること。
もちろん直接にもコミュニケーションをとって、その話し方を見て「緊張しているな」とか「調子に乗っているな」とか、いろいろなことを感じ取らなければならない。
それを見て「じゃあどう働きかけるのがいいのか」と考えなければならない。
だから、それはもうしんどい。でも指導者とか上司とかって本来そういうもの。

部下の人たちが納得できる目標だけ示して、やり方はそれぞれ自由にやっていい、「この目標に対して自分なりにチャレンジしてみないか?」と働きかけた方が、すべて「ああしろ、こうしろ」とやり方を押し付けて、できない人に対して怒鳴り散らすよりよっぽど結果につながる。

なぜって、前者のように自分ごととしてやる方が仕事は絶対に楽しい。
ワクワクするだろうし、「こんなやり方をしてみよう」というアイデアだって出てくる。
社会人がサッカーから学ぶことがあるとすれば、それはやはり「サッカーも仕事も楽しくやるのが一番」というところ。
それが一人ひとりの主体性を引き出し、結果として成長や成果にもつながる。


 

コーチの現場に携わっていて、いつも感じ、意識していることだったりします。

そして、それは大人の社会でも通じるってことも。

そして自分は、まだまだだなあと・・・。
日々、勉強ですね!